Live Cell Imaging of Secretion activity (LCI-S)

わたしたちの体はおよそ37兆個の細胞からできています。それぞれの細胞は、自分自身に与えられた役割を適切に果たすことで、健康な体が維持されます。例えば、筋細胞は細胞内に伸び縮みするための仕組みを備えていて、細胞全体で収縮することで体を動かす機動力になっています。また、神経細胞は細胞内外で電位差を発生させる仕組みを備えていて、刺激を一瞬の電気信号に変えて体内の遠い箇所へと伝達します。

こういった、ある種の細胞に限定される特殊機能は健康な体の維持にもちろん不可欠ですが、これらをうまく調和する機能、すなわち、細胞同士がコミュニケーションをとって、適切に体を運営するための機能があります。それが、分泌(secretion)とよばれる機能です。

分泌とは、細胞が外に向けてメッセージ物質を放出する機能であり、メッセージ物質を受け取った細胞はメッセージに応じたふるまいをします。分泌されたメッセージ物質はいわば細胞からの声であり、メッセージ物質のやりとりは細胞の会話です。

細胞がいつ声を発して、どのようにメッセージが伝わっていくのか。実はいまでもよくわかっていません。体の状態を変えてしまうかもしれない会話なので、声の大きさも出すタイミングも厳密に制御されているはずだ、と信じられてきました。そんな会話をこっそり盗み聞きするための技術、それが、LCI-S(Live Cell Imaging of Secretion activity)です。

LCI-Sの基本原理は、メッセージ物質を検出するときに最もよく用いられる方法、イムノアッセイを、一分子蛍光イメージングで用いられる顕微鏡観察技術、全反射照明法で観察する、というものです。基本となる原理(下図参照)は2014年に論文発表*しました。

* Shirasaki, Y., Yamagishi, M., Suzuki, N. et al. Real-time single-cell imaging of protein secretion. Sci Rep 4, 4736 (2014). https://doi.org/10.1038/srep04736

この技術によって、細胞を培養しながら、放出されたメッセージ物質をその場でリアルタイムに見える化することが可能になりました。動き回る細胞からメッセージが発せられる様子を、この動画内でご確認ください。

LCI-S開発

LCI-Sは、弊社顧問も引き受けていただいている当時臨床研究所室長の原田慶恵先生(現大阪大学蛋白質研究所教授)と、かずさDNA研究所副所長の小原收先生の、何気ない会話から原型が誕生しました。いくつかの試行錯誤がありましたが、現在の形へと大きく変遷したのは、小原先生のもとにポスドクとして白崎善隆先生(現東京大学特任助教)が配属されてからです。この辺りの開発秘話は、また後日ご紹介しましょう。